氷に対する飽和水蒸気量とは?

2024.1.5

 

備忘のため、前職在籍時にOneNoteに記載していたメモを転記。

 

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氷に対する飽和水蒸気量とは?

氷に対する飽和水蒸気量とは?

飽和水蒸気量には「水に対する飽和水蒸気量」と「氷に対する飽和水蒸気量」があり両者は違うとのことです。①これについて、全くイメージがわかないので、どなたかご教示いただきたくお願いいたします。②2つの飽和水蒸気量の違いのため、氷は飽和していて、水に対しては飽和していないとはどういうことでしょうか?③水に対する飽和水蒸気量とは、「その温度で含むことができる最大の水蒸気量」と理解していますが間違っていますか?すると、氷に対する飽和水蒸気量とは「その温度で含むことができる最大の何?」なのでしょうか?私は何がわからないかもわからず、どのように質問すればよいかも困ってしまうくらいわかないため、ちんぷんかんぷんな文章になってしまっていたらすみません。どうぞよろしくお願いいたします。


 

Answer:

雲が氷点下の温度になっても、雲を構成している水滴がすぐに氷になるわけではありません。

小さい粒で安定しているため、氷点下でも水のままで存在します。これを過冷却の水といいます。


さらに温度が下がり、-15℃くらいになると、雲粒の中に氷の粒が現れてきます。すると、同じ雲の中に、水滴と氷晶の雲粒が共存する状態ができます。この場合、氷の粒の周りと、水の粒の周りで、それぞれ飽和水蒸気圧が存在します。

氷晶のすぐ周りは飽和水蒸気圧が少し低く、水滴のすぐ周りは飽和水蒸気圧が少し高い状態になります。

すると、氷の近くにある水蒸気は、水蒸気で存在できず氷りにくっつきはじめます。一方、氷が水蒸気を集めた分、水滴の周りの方は水蒸気圧が下がるため、水滴が水蒸気を放出し始めます。そのため、短時間で氷の粒は成長し、水滴はやせて、最後は消滅します。

結果として、いくつかの氷の粒が、大きく成長し、これが融けて降ってくれば雨、融けずに降ってくれば雪やヒョウになります。

これが、氷晶雨とか冷たい雨とよばれる雨のでき方です。このときに水の蒸気圧と氷の水蒸気圧の差が重要になるのです。

プラントエンジニアリング事業の特色、会計処理及び内部統制

2024.1.4

 

Happy new year.

備忘のため、前職在籍時にOneNoteに記載していたメモを転記。

 

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個別受注産業 

第3回:プラントエンジニアリング事業の特色、会計処理及び内部統制 
 

2016.04.19 

新日本有限責任監査法人 個別受注セクター 
公認会計士 鈴木雅也/田中洋子/三井洋介 

Ⅰ. プラントエンジニアリング事業の特色 

  1. プラントエンジニアリング業とは

プラントエンジニアリング業とは、プラントの企画、設計、調達、建設工事、施工管理、保守等の一連の業務を一括又は部分的に請け負うサービスを提供する業種のことをいいます。プラントとは、製造設備一式を指しますが、多種の機器装置が有機的に結合して、一定の機能を有する設備一式であり、液化天然ガスLNG)、石油精製、化学、発電、製鉄、環境衛生、社会インフラ、その他産業プラント(工場)等様々な種類があります。 

企業数は少ないですが、主としてエネルギー関連のプラントを中心に扱う専業エンジニアリング会社をはじめとし、鉄鋼会社を親会社に持ち製鉄プラントや貯蔵設備・環境プラント等を扱う鉄鋼系エンジニアリング会社、造船・重機・重電会社を親会社に持つ環境・発電・産業プラント・社会インフラ等を扱う造船・重機・重電系エンジニアリング会社等、各社が得意とする技術領域で事業を展開しています。 

  1. プラントエンジニアリング業を取り巻く環境

顧客の設備投資需要や為替、資源価格、地域の政治経済や社会情勢等の影響を受けるため、受注には波があります。プラントエンジニアリング業界を取り巻く状況は以下のとおりとなっています。 

(1)近年のエンジニアリング受注状況は、国内向けについては大幅な金融緩和と公共投資の増加ならびに円安に伴う輸出需要の回復によって受注を伸ばしています。海外向けについても、インフラ市場の獲得を目指して首相をはじめとするトップセールスファイナンス面の支援によって日本企業の受注を後押しする形となっています。一方で、新興国の成長率の低迷や、資源価格の下落によって、資源会社は新規プラント建設を見送りなど、投資が抑制される可能性があり、今後の動向は注視する必要があります。 

(2)国内公共投資の削減や国内民間企業の海外進出を背景に国内設備投資が減少傾向にあり、プラントエンジニアリング各社は新興国を含めた海外事業の拡大を活発化しています。 

(3)価格競争力を武器に韓国・中国等のプラントエンジニアリング会社が台頭してきており、海外案件の受注競争が非常に激しくなっています。 

(4)設計・調達・建設を一括して受注する以外にも、収益の安定化を目的とし、プロジェクト管理業務、技術コンサルティング、完成後のメンテナンス等に業務拡大を図っています。 

  1. プラントエンジニアリング業の特徴

プラントエンジニアリング業のビジネスの特徴を挙げると以下のとおりです。 

(1) 大規模プロジェクト 

1件あたりの受注金額が会社規模に比べて大規模になることがあります。プロジェクトを受注して完成するまで、長いものだと3年以上を要することもあります。こうした大型プロジェクトは工事作業者が数千人規模になります。 

(2) 性能保証 

プラントは、ビルやマンションとは異なり、単に物理的に完成するだけでなく、技術的な性能を達成することが求められ、契約上、性能保証義務を負うケースがあります。 

(3) 多様な契約形態 

① 役務範囲による分類 

プラントは、ビルやマンションとは異なり、単に物理的に完成するだけでなく、技術的な性能を達成することが求められ、契約上、性能保証義務を負うケースがあります。 

② 価格決定方式による分類 

(ア)ランプサム契約(固定価格による一括請負契約) 
契約締結時に受注金額を確定する契約です。プラントが鍵を回して操業可能な状態まで責任を持って遂行するターンキー・ランプサム契約が代表的です。受注金額が大きく、順調に完成すれば利益も大きいですが、リスクも大きく赤字になることもあります。遂行中に資機材等の物価上昇があった場合、契約金額の調整を行うエスカレーション条項が付くケースもあります。  

(イ)コスト・レインバース契約、コスト・プラス・フィー契約(実費償還契約) 
かかったコストに応じて収入金額が変動する契約です。コストの実費精算額に、フィーが上乗せされます。客先の指定する工期・予算・安全等を達成した場合の成功報酬が契約上定められる場合もあります。 

③ 受注形態による分類 

単独で受注する他、他社と共同でジョイント・ベンチャーやコンソーシアムを組成して受注するケースもあります。 

(ア)事業リスク 
これについては4.で説明いたします。  

(イ)契約変更 
プラントは予め仕様を合意するものの、遂行途中でも設計変更、役務範囲や工事物量の変更などが少なくありません。その度に下請先や顧客との対価の変更交渉が行われます。  

(ウ)プロジェクト・マネージャー 
プラントエンジニアリング会社では、プロジェクト・マネージャーが任命され、損益も含めてプロジェクト遂行の責任と権限を持ち、スケジュール・コスト・品質を管理します。 

  1. プラントエンジニアリングの事業上のリスク

プラントエンジニアリング会社はプロジェクトを遂行するにあたって、様々なリスクに直面しています。長期間を要する大規模プロジェクトについては、リスクも大型化します。 

(1) 技術的リスク・品質リスク 

プラントは完成して性能が確認できるまでは、技術的な問題や品質問題が発生するリスクがあり、問題が発生した場合は手直しが必要になります。 

(2) 発注者に関するリスク 

発注者の経営状況の悪化等により、契約代金の入金が遅延し、プロジェクトの工期が遅れたり、中断する場合があります。 

(3) 調達先・下請業者に関するリスク 

特に海外の調達先や下請業者の場合、機器や作業の低品質、納期・工期遅延、労働者確保が困難となるリスクがあり、コストの増加をもたらします。 

(4) 物価変動リスク 

原油等資源価格・鋼材価格の変動により、資機材調達コストや建設コストの変動リスクがあります。見積入札時の想定を超えて急激に上昇した場合、採算が悪化します。受注契約にエスカレーション条項をつけることでヘッジするケースもあります。 

(5) 為替リスク 

海外案件については契約金額が外貨建となる場合が多く、大規模プロジェクトだと完成まで長期間を要するため、為替変動により損益に大きな影響を与えます。複数通貨での契約、工事代金と同一通貨建での発注、為替予約等によりヘッジしています。 

(6) カントリーリスク他 

海外案件の場合、法規制、税制、政治情勢、ストライキ、自然状況等により、プロジェクトのスケジュールやコストに影響を与える場合があります。 

  1. プラントエンジニアリング事業のビジネスの流れ

プラントエンジニアリング事業におけるビジネスは、一般的に以下のプロセスを経て行われます。 

① 提案・見積・入札 

顧客のニーズに応じた仕様を提案します。コストを積算し、見積価格を提示します。海外案件の場合は、競争入札が多いですが、入札を行わない随意契約のケースもあります。 

② 受注 

受注が決まり、契約締結をします。プラントの契約は、個別性が強く契約ごとに内容が異なります。 

③ 設計 

基本設計、詳細設計の順で行います。基本設計は、主要機器等の仕様を決定し、プラントの基本性能や配置を決定します。詳細設計では、設備の構成要素の詳細な仕様や配置を決定し、工事の図面を作成します。 

④ 調達 

調達先(ベンダー)を選定し、発注します。プラントに必要な主要な機器は特注製作品が大半です。ベンダーの作成する図面や仕様書の確認を行い、製作工程管理、納期管理、輸送計画の策定、輸送手配を行います。発注条件に従い受渡が行われ、現場搬入時に受入検査を行います。 

⑤ 建設工事・施工管理 

下請業者(サブコントラクター)を起用し、請負契約を締結します。土建工事から始まり、機器の据付、電気配管工事等へと進みます。工程管理、作業者の労務管理や安全品質管理を行います。 

⑥ 試運転 

プラントが完成した後、仕様どおりの性能が出るか試運転を行ってテストします。 

⑦ 引渡 

試運転に合格すると、引渡が行われます。引渡時点から瑕疵担保保証期間が開始されます。 

⑧ 運転・保守管理(メンテナンス) 

通常、運転保守管理は発注者が行いますが、契約によっては、工事請負契約とは別に、運転業務や保守管理業務を請け負うケースもあります。 

プラントエンジニアリング会社のビジネスの流れと会計の関係 

(図をクリックして拡大) 

Ⅱ. プラントエンジニアリング会社の会計処理及び内部統制の特徴 

プラントエンジニアリング会社の会計処理及び内部統制の特徴は以下のとおりです。 

  1. 入札・受注

受注の際には損益見込、契約条件を踏まえた承認を経ることになります。不採算案件の発生を防止するためには、受注の検討段階で、契約内容を精査し、想定される様々なリスクを洗い出し、分析したうえで、受注の可否を決定することが重要になります。 

受注が決定した場合は、個別工事損益管理単位を明確にするため工事ナンバー等の発番が必要とされます。通常は契約書の単位ごとに損益管理対象を設定しますが、実質を鑑み複数契約を一つに結合する事や契約書の取引を複数に分割する事が行われます。これらの損益管理単位について、適切に設定するための承認プロセスが必要になります。また、受注時点でその工事損益管理単位から損失が見込まれる場合は、受注損失引当金を計上する必要があります。 

  1. 実行予算管理

受注に当たっての積算原価をもとに、その後の価格や仕様変更を踏まえて実行予算が作成されます。設計段階でのVE(バリュー・エンジニアリング)やCD(コストダウン)の可能性を検討し、原価低減を図ることが行われます。VE/CDの実現可能性を含めた総原価に関する予算統制が重要となり、実行予算作成の承認体制の整備が必要となります。 

実行予算については、遂行中に定期的に最新の状況を反映して見直されることが必要です。実績原価と予算を比較し、今後の見込を見直したうえで実績原価に加えて総原価を算出します。 

設計変更、下請業者等からのクレーム(契約対価の追加請求)、未契約項目の物価変動、下請業者との契約時点からの物量変動について把握し、合理的な見積もりを行って、実行予算に反映することが必要になります。 

工事収益については、設計変更や追加請求について発注者との打ち合わせ議事録等により、実質的合意を得られた上で計上する体制が必要になります。 

また、エスカレーション条項付契約の場合は、契約に従った指標・算定式により請求可能な金額を計上します。 

  1. モニタリング体制

プロジェクト管理の面では、定期的に進捗状況や遂行上の問題点がプロジェクト・マネージャーから本社事業部や経営層に報告されることが重要です。 

  1. 決算・出来高検収

出来高検収においては、下請会社による出来高報告に基づきプロジェクト工事担当者が作業内容を確認して検収を行います。決算月で出来高報告が決算の締めに間に合わない場合は、出来高を見積もって網羅的に未払計上することが必要です。 

  1. 工事損失引当金

工事からの損失が予想される場合、引当金の計上が要求されます。適切な実行予算が作成されていることが前提となり、実行予算から網羅的に損失工事を把握する体制が必要になります。 

  1. 完成引渡、完成工事補償引当金

プラントが完成し客先への引渡しが済んだ場合、客先検収書により引渡しの事実を確認して工事進行基準の計算を終了します。引渡時に追加的残工事が予定される場合や下請会社からの追加請求が行われている場合は当該工事原価を見積ったうえで計上します。また、工期遅延工事について発注者との打合せ議事録等により工期遅延損害賠償金の負担発生の可能性を検討し合理的に見積もった金額を計上する必要があります。 

また、引渡し後の瑕疵補修等アフターコストについて、過去の実績に加え、個別プロジェクトごとに瑕疵補修の発生の有無に基づき完成工事補償引当金を計上します。 

  1. 代金回収

受注金額の大型案件については施工が長期に及ぶことから、発注者の財務状況により支払い能力に問題が発生する可能性があり、案件遂行中に継続して客先の与信リスクを管理する必要があります。客先の財務内容や工事期間中の入金状況を検討し、残代金の回収可能性を検討する必要があります。 

  1. 運転保守管理

包括的メンテナンス契約を結ぶこともあり、その保守期間が長期にわたる場合のうち、運転保守業務としての役務提供の重要性が高い場合、又は保守改修工事の請負工事の重要性が高い場合においては、その会計処理について契約を分離して売上計上を行う事が実態を表す場合があります。 

<参考文献> 

財団法人エンジニアリング振興協会 エンジニアリング産業の実体と動向 
財団法人エンジニアリング振興協会 What's Engineering? 
社団法人日本造船工業会 Shipbuilding News 

個別受注産業 

第1回:個別受注契約の会計処理の特徴 (2016.04.19) 

第2回:造船業における事業の特色、会計処理及び内部統制 (2016.04.19) 

第3回:プラントエンジニアリング事業の特色、会計処理及び内部統制 (2016.04.19) 

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プロジェクトのカギを握る価格契約方式とは!?-価格契約方式とリスク負担

2024.1.4

 

Happy new year.

備忘のため、前職在籍時にOneNoteに記載していたメモを転記。

 

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プロジェクトのカギを握る価格契約方式とは!?-佐藤隆良の建設コラム特集-価格契約方式とリスク負担 

前回の建設コラム特集では、発注者が建築工事の注文を出す時、工事を請け負ってもらう建設業者を決めるにはどのような方法(発注方式)があるかについて発注・調達編として全5回のコラムにわたり紹介しました。今回は発注者と建設業者との間でなされる建築工事における価格契約のあり方について具体的に説明していきます。 

 
 
 

価格契約方式の種類と特徴を学ぼう! 

 
日本では建築工事で価格を契約する方法として、これまでランプサム契約と呼ばれる総価請負契約一辺倒で行われてきました。しかし近年では、建築工事の内容や契約の状況に応じて総価請負契約の他にも、最適な価格契約方式を採用するケースも出てきています。 

 
さて、価格契約のあり方は、大別すると下記の通り、①定額請負契約方式(Fixed Price Contract)、②実費精算契約方式(Cost Plus Fee Contract)、そして③目標コスト契約方式(Target Cost Contract)の3つがあります。 

 
①定額請負契約(さらにa)からc)などに分かれる) 

 a)総価請負契約 

 b)単価請負契約 

 c)総価単価請負契約 

②実費精算契約(コスト・プラス・フィー契約) 

③目標コスト契約 

 
それでは具体的に先に挙げたこれらの「価格契約方式」におけるそれぞれの特徴と、価格契約方式に基づく契約上のリスク負担について紹介していきたいと思います。 

 
 

①定額請負契約とは!? 

 
この契約方式の特徴は、請負工事業者が工事額を事前に見積り、その工事額で設計図書に定めた仕様通りに完工を約束するものとなります。その為、実際に工事原価がいくらになろうとも工事業者側はその取り決め額で工事を完成させるリスクを負うことになります。 

 
我が国では、この「定額請負契約」は「総価請負契約(Lump Sum|ランプサム)」と全く同じ意味として理解されている場合がよくみられますが、厳密にいうとこの定額請負契約として分類される対象としては、日本で広く採用されている総額のみで価格契約する「総価契約(Lump Sum|ランプサム)」のみならず、土工事、コンクリート工事等の専門工事に契約する「専門工事請負契約」、あるいは工事内訳書の細目工事単価毎での「単価契約」も含まれることになります。「単価請負契約(Unit Price Contract)」による場合でも、事前に工事をその単価で実施するという約束であり、「定額請負契約」に分類されるのであります。 

 
a)総価請負契約 

この「総価請負契約」は受注業者が建設工事を一式総額のみで請負う方式であり、ランプサム請負契約方式(Lump Sum Contract)とも呼ばれ、実質的に我が国で現在採用されている価格契約方式の大部分がこの総価請負契約によるものであります。 

 
この方式の特徴は、契約締結後に設計変更などで当初の契約条件が変わらない限り、実際に工事で要した費用が契約額を超えた場合であっても発注者から追加の支払いはなく、また契約金額を超えない場合には、その金額分を発注者へ返還しなくて良い点が挙げられます。 

 
この方式を採用する場合には、設計図面の完成を待ってから総額を算出した後、契約へと進むのが基本です。その為、総価契約を結ぶ前提として設計が確定していることが基本的な要件となります。また、契約のベースとなるプロジェクトのスコープや設計内容が確定していない場合は、発注者/受注者の双方のリスク負担及び確定内容の程度に対応する価格契約方式が適用されることとなるのが一般的です。 

 
発注者にとっては、支払う工事総額が契約時に確定しているので明確になっており、またコスト管理も行いやすい点、一方、受注者にとっては、契約後の資材や労務費等の物価上昇、や工事費算出時の積算の間違い等があってもそれらを負担しなければならないリスクがあるが、逆に自社の技術力や努力で利益を上げる可能性もある点が、この方式の特徴として挙げることができます。 

 
b)単価請負契約 

「単価請負契約」とは、設計図の完成度が低い段階で契約をする場合や着工を急ぐ場合に用いられ、請負工事の工種ごとに、単位数量当たりの工事価格、すなわち「単価」を決めて行う契約を指します。この方式の特徴は、実際に要した数量や経費は設計図が完成後に計測して、それに契約された「単価」を掛けて工事金額を精算する点です。 

 
また、日本では主に改修工事や修繕工事等に採用されていますが、その理由としては、これらの工事では、例えば、既に建設時の図面がなく、天井裏など実際に工事に着手してからでないと既存の状態が把握できないケースや、建設時の図面が残されていた場合であっても、建物の現状が図面の通りになっていないケースがあることが挙げられます。その為、工事に必要な数量や経費については契約後の段階で確定した時点で計測してから、契約した「単価」と併せて工事金額を算出します。 

 
c)総価単価契約 

この「総価単価契約」は英連邦諸国において頻繁に採用されている価格契約方式です。具体的には、入札時における入札経費の無駄を省く目的でBQ書(Bill of Quantities|ビル オブ クォンティティズ)と呼ばれる工事数量積算明細書を発注者側が準備し、そのBQ書に基づいて入札者が値入れ業務を行うという数量公開による入札体制による価格契約方式となります。 

 
BQ書に提示する工事数量に関して、発注者側が責任をもつ契約数量として提示し、また、工事単価も契約の対象としているのが特徴です。したがって、BQ書は発注・契約図書の1部でもあり、この方式による請負業者との契約は、総価による請負工事であるが、また、同時に各工事項目単価も契約の対象となるので「総価単価契約方式」と呼ばれております。 

 
この方式の目的は、総価契約の総価のみの契約から、各々の工事単価についても受発注者双方が前もって合意しておくことで、設計変更等の場合の円滑な価格協議など双務性の向上にあります。近年では、契約金額の変更に関する根拠を予め契約時に定めておくことで、変更手続きを円滑に進めることができるようにする目的で、公共工事を含めて総価契約単価合意方式が適用されるケースも出てきています。 

 
ここで紹介した3タイプの定額請負契約についてまとめると、これまで前述したように発注の際に契約となる対象が異なることが下記イメージからも分かります。 

 
 

 
 

②実費精算契約(コスト・プラス・フィー契約)とは!? 

 
この「実費精算契約」は契約時点で事前に設計が確定していない場合や、技術的に未知の要素が多い場合など、請負に伴うリスク負担が大きく、無理に請負として契約にしようとすれば見積もりが高くなってしまう場合に活用される契約方式です。例えば、東日本大震災などの震災や災害における復旧工事では、緊急を要するが完成度の高い図面や仕様書が準備できないケースがあり、このような場合には逐次工事に要した実費を精算しながら工事を進めていく「実費精算契約方式」が採用されることとなります。 

 
この契約方式の特徴としては、発注者にとっては、対象となる工事の詳細が確定しない段階で工事をスタートできる一方で、最終的に工事が終わってみなければ、工事金額が幾らとなるか分からないというリスクを有する点が挙げられます。また、受注者としては、物価上昇など工事原価に影響を与えるリスクを負うことなく契約に基づいた一定の利益を確保できる一方で、実費清算を行う際に発注者より承認を得る為、承認用資料の作成に多くの手間・時間が必要となる点が挙げられます。 

 
また、この方式による最終的な工事金額は工事で要した「実費」と受注業者の「報酬」から決定されますが「コスト・プラス・フィー契約」とも呼ばれており、基本的には文字通り、下記の2つで構成され、これらによって最終的な工事金額が算出されます。 

 
・Cost=コスト(実費)労務費、材料費、機能費、プラス諸経費 

・Fee=フィー(報酬)|コストに対するパーセンテージ、一定額など 

 
一般に「コスト」は実費として要した金額で発注者によって承認された額となりますが、受注業者の報酬にあたる「フィー」については、コストに対するパーセンテージで決定される契約、コストとは関係なく一定額である契約、目標工事金額を大幅に下回った場合などにインセンティブを受け取ることができる契約など、プロジェクトによって採用される報酬形態が異なります。 

 
 

③目標コスト契約とは!? 

 
「目標コスト契約」とは「定額請負契約」と「実費精算契約」の中間的な価格契約で、「実費精算契約」をベースとして、工事に要する「コスト(実費)」と「フィー(報酬)」から最終的な工事金額が決定されます。具体的な特徴としては、発注者と受注業者の間で「目標コスト」を設定し、実費ベースで工事に要した費用が「目標コスト」と比較し、下回った場合はコスト縮減分の一部が受注業者へ分配される一方、超過した場合には超過分の一部または全てを受注業者が負担する方式である点です。 

 
この「目標コスト」は契約時点での図面や仕様書に基づいて発注者と受注業者の両者によって設定されますが、設計や仕様に変更などがあった場合は両者合意の基に調整されることもあります。 

 
一見すると「実費精算契約」と同様の契約にも見えますが、「実費精算契約」では受注業者が一定幅の利益を確保することが可能である契約なのに対し、「目標コスト契約」では、例えば、実費コストが「目標コスト」を大きく超過した場合などには、受注業者で想定していた利益が大幅に減ってしまう場合もリスクとしてあることが、両者の違いとして挙げられます。 

 
また「目標コスト契約」では、建設業者が最終的な工事金額の最高限度額を保証する契約、つまり、最高限度額を超過した場合の金額は業者が負担する契約として「GMP(Guaranteed Maximum Price)|最高限度保証額/保証上限金額」を設定する場合もあります。 

 
ここで、これまで紹介してきました価格契約方式のうち主要な方式について、その特徴やメリット・デメリットを下記のイメージのようにまとめてみます。 

 
 

 
このように、建築工事を発注する際の価格契約方式について様々な方法を紹介してきました。それぞれの方式における特徴やメリットやデメリットをよく理解したうえで、抱えているプロジェクトの目的や状況に応じた最適な方式を採用することもプロジェクトのカギを握ることとなる重要な選択となります。 

 
 
 

佐藤隆良の建設コラム特集-価格契約方式とリスク負担」はこちらから↓ 

プロジェクトのカギを握る価格契約方式とは!? 

 
佐藤隆良の建設コラム特集-発注・調達編」はこちらから↓ 

(1)建築工事の発注・調達は賢い買い物にしよう! 

(2)プロジェクトに応じた発注契約方式を検討しよう! 

(3)多様化する発注・調達の方式を学ぼう! 

(4)多くの選択肢より最適な発注方式を模索しよう! 

(5)プロジェクトを成功に導く発注・調達の方式とは!? 

 
佐藤隆良の海外建設市場シリーズ」はこちらから↓ 

(1)世界62か国で建設費が最も高い水準なのは!? 

(2)世界の建設市場における労務費を比べてみる! 

(3)世界における建設市場規模はどの程度か!? 

 
 

著者紹介 

佐藤隆 

株式会社サトウファシリティーズコンサルタンツ 代表取締役 

 
 

1946 年生まれ。大学の建築学科を卒業後、イギリスの地方公共自治体建築部、及び民間コストマネジメントコンサルタント事務所に8 年間在籍し、公共施設や民間プロジェクトにおける開発計画業務のフィージビリティースタディー、建設経済分析・評価、コスト管理業務等に携わる。帰国後、1993 年(株)サトウファシリティーズコンサルタンツ設立。国内外プロジェクトの建設コストマネジメントを中心に、幅広いコンサルティングを手がける。2005 年、(社)日本建築積算協会理事・副会長そしてアジア太平洋建設コスト管理士協会(PAQS)会長を歴任。 

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最小ロットってどういう意味?知っておきたい「ロット(Lot)」のこと

2024.1.4

 

備忘のため、前職在籍時にOneNoteに記載していたメモを転記。

 

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2016/10/31 Mon 

最小ロットってどういう意味?知っておきたい「ロット(Lot)」のこと 

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こんにちは!貿易女子の円(まどか)です。今日は、製造会社との貿易取引での書類などにも書かれる「ロット(Lot)」についてご紹介しますね。「ロット」とは、同じ条件のもとに生産(製造)する製品の“生産(製造)数量、出荷数量の最小単位”を意味するんです。では、早速始めますよ~♪ 

製造会社の現場で使われる「ロット(Lot)」の意味を知ろう! 

貿易の現場では、穀物や果物などの自然物を取り扱う生産会社、車や電化製品、化学品など人が製造(加工)する商品を取り扱う製造会社(メーカー)など、さまざまな会社と取引しますが、「ロット(Lot)」という言葉はとりわけ製造会社の現場でよく使われます。 

一般的に製造会社は、たった1個の注文に対して応えて製造したり出荷したりするようなことはしません。そんなことをしているとコストがかさむので、それを解決するために注文数量や出荷数量の「最小単位=ロット」を取り決め取引先に提示するのです。 

たとえば、1箱に入る数量が1ダース(12個)で1箱から出荷することが可能な商品は、出荷数量の「最小ロット」を12個とし、24個や36個の注文には対応するが、10個や20個という注文には応えないという基準を決めるのです。 

また商品の中には、100個以上(100kg以上)という数量でなければ採算に見合わないものもあります。その場合、製造会社はその生産能力に合わせて最小注文数量=「最小ロット」を取り決めるということもあります。 

このように、「ロット」という言葉はとても幅を利かせて使用されるのですが、「最小ロット」の他にも「小ロット」という言葉もよく使われます。「小ロット」は小さい最小単位を意味し、その文脈の中で意味が変わってきますが、「小ロットで購入したいんだけど…」といえば最小ロットに近い数量を指していますし、「小ロットでの生産が可能です」といえば少量生産できることをアピールしているということになります。 

輸出者から発行される価格表(プライスリスト)にはLotという言葉で最小注文数量や最小単位を示していることがありますので、その内容(文脈)を見て判断しましょう。 

製造会社が管理のためにつける「ロット番号」 

ここまでご紹介した使い方以外によく使われるのが「ロット番号」というもの。製造会社によっては、同じ商品でも製造会社が製造年月日ごとに番号をつけたり、原材料が変わるタイミングで別の番号をつけたりして、管理することがあります。 

塗料等の化学品を製造している会社では、同一環境、同一条件で、化学品を製造しても化学反応で生まれる割合が微妙に異なる場合があります。たとえばある物質が60%〜75%の主成分を占める化学品で、今日製造したものが62%の主成分が含有しているものが、翌日には71%になったりすることがあるのです。こうした商品は通常、ロット番号をつけて管理されています。 

※このような商材を購入する輸入者もまた、成分に微妙な差があることを理解した上で、まずロット番号違いの複数サンプルを入手し、試験をした結果、一番適合するロット番号を指定して輸入したりします。 

「ロット番号」というのは、ロットナンバー、シリアルナンバー、製造番号など会社によって呼ばれ方が異なりますが、意味していることは同じです。「ロット」にはこうした使われ方をするということも覚えておきましょう。 

 
 

「ロット」の意味や使われ方、ご理解いただけましたでしょうか?「ロット」は貿易特有の言葉というよりは製造会社(メーカー)で使われる言葉ですが、商社や貿易会社の多くは製造会社と取引しているので、今は使っていないという貿易事務の方もぜひ知っておいていただけたらと思います!では、また来週お会いしましょう♪ 

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タグ 

貿易取引の基礎知識貿易雑学 

 

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電線とケーブルの違いについて

2024.1.4

 

Happy new year.

備忘のため、前職在籍時にOneNoteに記載していたメモを転記。

 

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電線とケーブルの違いについて

実際にはもっとたくさんの分類がありますが、ここでは、電線・ケーブル(例:電力ケーブルと通信ケーブル)がどのように違うのかを実際の写真を見ながら解説したいと思います。

電線

電線は電気を通す目的で使用されるものの総称として呼ばれ、図1のように導体(電気を通す材料)を絶縁体(電気を通さない材料)で覆ったものを指します。

図1.電線について
電線とケーブルの違い 電線の構造

ケーブル

次にケーブルですが、複数の電線を外装(外皮:シース)で覆い一つに束ねて、強度や絶縁の性能をアップしたものです。

-外皮(シース)について-
外皮(シース)にはケーブル外側の被覆で絶縁体が濡れてしまったり傷んだりすることを予防する役割があります。
使用される材質はケーブルの種類や用途に合わせて適切に選択する必要があります。

図2は3本の電線を3つに束ねて外皮(シース)で覆ったタイプの電力ケーブルです。(電線の本数はさまざまです。)

図2.電力ケーブルについて
電線 ケーブル 違い 電力ケーブル

また、電力を送る以外で比較的身近にあるケーブルとして、LANケーブル(通信ケーブル)がありますが、これも電気信号を送るために使われるケーブルの一種です。

図3のようにLANケーブル(通信ケーブル)には8本の細い電線が組み込まれていることがわかりますね。

図3.通信ケーブルについて
電線 ケーブル 違い 通信ケーブル

種類と記号

電線及びケーブルには非常に多くの種類がありますが、その中で弊社でも取り扱いのある電線・電力ケーブル・通信ケーブルについて、表1にまとめて一覧表にしていますので、参考にしてください。

表1.種類・記号・名称 及び 用途について

種 類 記 号 名 称 用 途
電線 IV 600Vビニル絶縁電線 屋内配線用
KIV 電気機器用ビニル絶縁電線 盤内配線・機器用配線
DV 引込用ビニル絶縁電線 電柱からの引き込み用
電力ケーブル VVF ビニル絶縁ビニルシースケーブル(平形) 電灯・コンセント・他全般
VVR ビニル絶縁ビニルシースケーブル(丸形) 低圧引込等
CV 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル 幹線・動力・電灯・コンセント
CVT 単芯3本より(トリプレックス)形架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル 幹線・動力
通信ケーブル AE 警報用ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル 自火報設備P型の感知器
HP 耐熱ケーブル 非常放送設備・自火報設備幹線
FCPEV 着色識別ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル 構内通信回路・照明リモコン回路
FCPEV-S 着色識別ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルの遮へい付ケーブル 構内通信回路のシールドが必要な環境で使用
CVV 制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル 警報線等
UTP LAN用ツイストペアケーブル LAN用
スクロールできます

また、弊社ブログにさらに詳細なケーブルについての選定表が下記の通りございますので、ケーブルの選定の際にはぜひ参考にしてください。

 

 

電線とケーブルの基礎知識

ここでは、電線とケーブルに関する基礎的な知識について解説します。

導体の材質について

電線・ケーブルに使用されている導体については、そのほとんどをアルミニウムが占めています。

また、建築物に使用されるいわゆる内線用としては、銅の導体が一般的と言われています。

銅とアルミニウムの特徴

ここでは銅とアルミニウムの特徴をまとめてみました。

表2.銅とアルミニウムの特徴について

銅の特徴 アルミニウムの特徴
・電気伝導率が非常に高く電気を通しやすい ・一般には構内ケーブルには使用されず、送電線に広く用いられる
・市販されている一般的なケーブルに導体として使用され、絶縁被覆で覆った電線や、シースで覆ったケーブルとして販売されている ・金を除き銅についで電気伝導率が高く軽量である(銅の3分の1の重量)
・銅の伝導率は万国電気工業委員会で標準とされこれを導電率100%としている ・銅よりも密度が低く重量が軽いので長い距離を施設するのに向いている
・電気精錬で得られる銅導体の成分純度は99.96%以上と高い純度である ・酸化によって表面がアルミナ層で覆われ腐食に強い
・銅は常温、乾燥空気中でほとんど酸化しない ・銅よりも価格が安い(銅の1/3~1/2程度)