日本が天然ガスを高く買わされている3つの理由

2024.1.6

 

備忘のため、前職在籍時にOneNoteに記載していたメモを転記。

 

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日本が天然ガスを高く買わされている3つの理由

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2013年1月 9日

今、全国各地の電力会社が電気料金を値上げしようとしています。
 その理由は、原発が止まったからですね^^;

現在稼働している原発は、全国でも福井県にある大飯原発3・4号機だけです。
 今まで原発で発電していた分は火力発電所で発電しています。

火力発電所で発電するなら、必要なのは石油や天然ガスなどですね。
 資源が少ない日本は現在、外国からたくさんの燃料を輸入していて、原発停止を機にさらに燃料の輸入が増えたので、電気料金も上がるわけです。

そして、火力発電所で今多く使われているのは、石油ではなく天然ガスだということをご存知でしょうか?

しかも、日本は世界の中でも天然ガスを高く買われているんです。

こういう問題もクリアしていかないと、原発停止を叫んでも電気料金は高くなる一方ですし、結局は現実性を考えて「原発との共存」という方向に行ってしまうかもしれません。

天然ガスとは?

日本がどういう経緯で天然ガスを高く買わされているのか説明する前に、
 そもそも「天然ガス」とは何なのか?というところからおさらいしてみます。

天然ガス」というのは主にメタンガスのことです。
 燃やしても比較的二酸化炭素の排出が少ないことから、火力発電では近年、石油よりも天然ガスの方が多く使われています。

天然ガスはだいたい石油と同じ所に埋まっています。
 その中でも地層の歪曲したところに溜まっていることが多いので、そのようになっているところを探すのですが、日本国内ではごくわずかしか存在しておらず、採算が採れるほどありません。

なので輸入に頼る必要があります。

ちなみに、「天然ガス」と「プロパンガス」は違います。

天然ガスは、取り出す時点で既にガスになっているので「天然」という言葉がつきます。
 プロパンガスは人工的に作られるもので、原油重油軽油、灯油、ガソリンなどに分ける時に発生するガスのことです。

また、「プロパンガス」に対して「都市ガス」と呼ばれているものもありますが、これは実は「天然ガス」のことで、ガス管を通って各家庭に送られてきます。
 主に都心部で使われているので「都市ガス」と呼ばれます。

今話題になっている「シェールガス」も天然ガスの種類の一つです。

天然ガスが高くなる理由1:日本に輸入する場合は液化が必要

天然ガスを輸入する場合、同じ大陸同士の国なら、輸出国から輸入国にパイプラインを引いて、そこからガスを送ります。
 しかし、日本は海に囲まれていますので、パイプラインを引くのは簡単ではありませんね^^;
 ではどうやっているのか?というと、一度液体にしてタンカーで運んでいるんです。

採掘場で取り出した天然ガスを、現地の液化プラントに運び、圧力をかけてマイナス160℃まで冷たくすると液体になります。
 そうやってできた液体の天然ガスLNGと呼ぶのですが、その段階で体積が600分の1になります。
 それをLNGタンカーで運び、日本でガスに戻して各家庭に届けているわけです。

パイプラインで運んでいる国には不必要な"液化"という工程が入るので、その分値段が高くなります。

天然ガスが高くなる理由2:世界各地から分散して購入している

日本は天然ガスを世界各地から購入しています。
 財務省貿易統計(2011年度)によると、主な輸入元は、

  • マレーシア・・・18.2%
  • カタール・・・17.2%
  • オーストラリア・・・16.3%
  • インドネシア・・・9.5%
  • ロシア・・・9.3%
  • UAE・・・6.8%
  • オマーン・・・5.1%
  • ナイジェリア・・・4%

となっています。
 中東、東南アジア、ロシアなど、多岐にわたっていますね^^

通常、ものを大量購入する時は安くなるものですから、どこか1ヶ所から買った方が安くなるのでは?と思う方もいるかもしれませんが、このように購入しているのは、リスク分散のためなんです。

たとえば、中東の情勢はよくコロコロ変わりますが、もしカタールなどどこか1ヶ所に頼っていた場合、そこに問題が発生したら輸入が全てストップしてしまいます。
 こういうエネルギー資源は単なるものの売り買いと違って簡単に変えられませんから、あらかじめ分散しておいた方が良いんですね。

もし日本にも資源があるのならこのようにリスクに備える必要はないのかもしれませんが、現状はもしもに備えておかなければならない状態なんです。

天然ガスが高くなる理由3:日本は足下を見られている?

東日本大震災以降、日本の天然ガスの輸入量が増えていますが、実は輸入価格も上がってきています。
 一般家庭で3ヶ月分の使用料を比較すると、アメリカと比べてその差は約4倍。

アメリカは現在、南米からパイプラインを通して輸入しているので、LNGで輸入している日本と比べるとその分の価格差はありますが、それにしても差がありますよね^^;

量が増えているのに、値段が上がるのはどういうことか?
 これは、日本の原発が止まったことで、諸外国から「日本は天然ガスが必要だ」と足下を見られているんです^^;


 

3番目の問題は電力会社の交渉力の問題もあると思いますが、原発を動かさないままにするのなら、国内で利用可能な自然エネルギー関連の技術に力を入れることが必要でしょう。
 特に、日本近海に存在するメタンハイドレートの採掘技術の開発も早く進める必要がありますね。
 メタンハイドレートは今、取り出す技術を開発している段階で、今年は特に注目したい技術です^^

また、外国との交渉で天然ガスを安く仕入れる道も考えられています。
 まず、アメリカからシェールガスを輸入するという案もありますが、TPPの問題と絡んでいて、アメリカが売ってくれるかどうかわかりません。

ロシアは日本に天然ガスを売りたがっているので、パイプラインを引いて持ってくるという計画も上がっています。
 そうなると、実現するには時間がかかりますが、天然ガスのコストは安くなります。
 そしてそこには北方領土問題が絡みます。

どれも難しい局面ですが、可能性はあります。
 特にロシアの場合は北方領土問題の解決の糸口にもなるので、ぜひ政府には頑張ってもらいたいものです。
 2013年は色々と動きがありそうですね^^