回転機故障の原因となるミスアライメント(芯ずれ)
2023.7.4
備忘のため、前職在籍時にOneNoteに記載していたメモを転記。
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回転機故障の原因となるミスアライメント(芯ずれ) | TTS
カップリングはミスアライメントを吸収できる?
カップリングはミスアライメント(芯ずれ)を吸収することができるのでしょうか?時々、次のような質問を受けます。「ミスアライメントを吸収するフレキシブルカップリング(撓み継手)があれば、回転機のアライメントは必要ない?」これに対する答えは、否です。
カップリングメーカーによる芯出し(アライメント)許容値表を見ても、また過去の経験から言っても、フレキシブルカップリングがどんな芯ずれをも吸収するものではない、ということが分かります。過去の統計によると、回転機故障の約半分は不正確な軸芯出しが直接的な原因となり得ることが明確になりました。
フレキシブルカップリングは、一般的に10mmやそれ以上の周方向のミスアライメントを緩和するように設計されています。しかし、ミスアライメントがあるとカップリングに応力が生じ、その 反作用によって軸(シャフト)と軸受(ベアリング)やシールに働く負荷が飛躍的に増大します。例えば600rpmで、最大6mmの芯ずれに対応するよう設計された445mmのあるカップリングには、ミスアライメント1mm当たり1.2kNの応力が発生します。つまり、フレキシブルカップリングは確かに一定のミスアライメントを緩和しますが、芯がずれていると軸や軸受などへの負荷が増大するため、結局はフレキシブルカップリングであっても精密なアライメントが必要です。
軸受(ベアリング)のダメージ
軸受は清浄な潤滑状態で、一定の温度範囲で使用するよう設計された精密部品です。0.005mm以内の精度で作られる軸受は、以下のような状況での使用には耐えられません。
軸受には、ミスアライメントによって運転中に与えられるダメージに加えて、メカニカルシール故障時の整備で、軸(シャフト)か ら軸受を取り外す際に受けてしまうダメージもあります。取り外した軸受を、再度はめこんで使用できる場合もありますが、多くの場合は交換が必要です。なぜなら、精密部品である軸受の取り外しと再はめこみという荒っぽい作業自体が、軸受にダメージを与えることがあるからです。見落としてしまうほど軽微な損傷であっても、再装着後、悪化することが少なくないため、ほとんどのポンプの軸受は健全そうな見た目と関係なく交換する必要があります。
メカニカルシールの故障
軸がミスアライメント状態にあると、軸シールの摩耗が進行します。高温高圧ポンプの軸シールとして広く使用されているメカニカルシールは、精密な接触面と研磨された部品で構成された、仕上がり精度2ミクロンの繊細かつ高価な部品です。メカニカルシールは、しばしばポンプ総費用の3分の1を占めるほど高額であり、メカニカルシールの破損は深刻です。メカニカルシールの破損は、予告もなく突然発生し、プラントの停止、シールや軸受の交換、ポンプの修理など多額の損害をもたらします。不正確な組み立てや過度な軸のミスアライメントは、メカニカルシールの寿命を短くします。
組み立て作業の質の問題は、特殊な専用工具が無い現場でも、誰でも正確な組み立てができるカートリッジ式軸シールが導入され、解決しました。一方、ミスアライメントに起因するシール故障がもたらす多額な損害は、精密な芯出しによって防ぐことができます。ミスアライメントによる影響には、機械の振動増加もあります。大きな振動は機械部品の損傷を引き起し、結果的に早期の機械故障に繋がります。
軸芯出しによる具体的なメリット
こんなときは注意!芯ずれの兆候
運転中の機械のミスアライメントを検出することは容易ではありません。ミスアライメントによって発生している半径方向の力を、稼働中に直接外部から測定することは困難です。代わりに振動計や赤外線サーモグラフィーによって、機械ケーシング(外装)の半径方向や軸方向の高い振動値、異常な表 面温度を測定することで、ミスアライメントの状況を確認することは可能です。
しかし、このような計器がなくても、次のような現象が機械に見られれば、芯出しの精度が低いと判断できる場合があります。
正確な軸芯出しは、 回転機のメンテナンスにおいて重要視されるべき項目です。適切に芯出しされた機械は、計画的及び突発のメンテナンスの削減に繋がり、そのプラントの信頼性を向上させる強みとなります。