ブレース構造とは何か?

2024.1.6

 

備忘のため、前職在籍時にOneNoteに記載していたメモを転記。

 

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ブレース構造とは何か?

 

構造力学の教科書をみると、『ラーメン構造』や『トラス構造』の解き方は書いてあるのに、ブレース構造の解き方は書いていません。それは、とても簡単だから、という理由でしょうか。又は、トラス構造の解き方が書いてあるから説明不要、ということでしょうか。

 

鋭い人は、トラス構造とブレース構造が同じこと、と気づくかもしれません。しかし、僕が初学者だった時のように、『専門用語』が1つ違うだけで、これは違う構造だと思ってしまうのです。※トラス構造の仕組みは、下記の記事が参考になります。

トラスの構造と仕組み


 

このサイトにも、ブレース構造に関する記事はほとんど書いてありませんでした。ですから、今回はブレース構造の解き方について紹介します。


 

ブレース構造の仕組み

ブレース構造とは、ラーメン構造に次いで採用されている構造形式です。ラーメン構造が、柱と梁を剛強に接合して地震や長期荷重に耐え構造に対して、ブレース構造は、『ブレース』と呼ばれる斜め部材で地震力を負担させ、合理的に部材断面を使うことができます。

※ラーメン構造も合わせて知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

ラーメン構造物とは


 

なぜ、ブレース構造が合理的かというと、ブレースには軸力しか作用しないからです。それは、トラス構造をみると良くわかるように、柱と梁、ブレースによって三角形が造られるからです。曲げモーメントでは少しか荷重を負担できない部材でも、軸力なら沢山の荷重を負担できます。


 

物理的なロジックは片隅において考えます。細い棒は手で簡単に曲がりますが、引張って、変形させようと思っても、中々難しい。つまり、軸力で力を伝達することは、小さな部材で大きな力を伝達できる方法なのです。

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ブレース構造で留意する点

ブレース構造で留意する計算項目は3つあります。下記の通りです。

ブレースの応力算定

ブレースの断面算定

ブレースの保有耐力接合

上記の3点について、それぞれ説明します。


 

ブレースの応力算定

まず、ブレースの応力算定で注意が必要な点は、水平力がベクトル分、割増されること。水平力の方向は、XかY方向です。この方向は、どちらも水平な力です。しかし、対するブレースは斜め部材なので、α=斜め長さ/水平長さ だけの割増が地震力に掛かってきます。


 

次にブレースの断面算定です。一般的にブレースは引張力にだけ効かせます。どういうことかといと、先ほど書いたようにブレースは細い断面で大きな荷重を負担できます。しかし、地震力は正負で作用するので、必ず引張、圧縮力の両方が作用します。しかし、部材を細くすると、『座屈』し、とても荷重を負担できるものではありません。

※座屈については下記の記事が参考になります。

座屈現象について


 

よって、ブレースは普通『タスキ掛け(バッテンのブレース)』にするのです。こうすれば、正負両方の地震力が作用しても、引張力が作用するブレースを設計すれば良いのです。


 

もちろん、座屈に耐えうるブレースにすれば、片側だけブレースを配置してもOKです。例えば、アングル材とかチャンネル材とか、座屈耐力のある部材は正負両方向に耐えられます。但し今回は、引張ブレースのみを話題にしましょう。

※チャンネル材の特徴については、下記の記事が参考になります。

溝形鋼の特徴と重量溝形鋼と軽量溝形鋼について


 

また、ここで言うブレースは、あくまでも地震力に耐えるブレースのことを言います。一般的にブレースは耐震要素です。長期荷重は負担させないのが普通なのです。


 

ブレースの断面算定

さて、引張ブレースの断面算定でも注意点があります。それは、断面積と有効断面積を間違えないこと。有効断面積とは、断面積からボルト穴や偏心曲げの影響を考慮して、断面積を小さく見積もるのです。


 

場合によっては、断面積の半分程度まで有効断面積が小さくなることも。必ず有効断面積により検討を行いましょう。ブレース材の有効断面積の考え方については、下記が参考になります。

断面積と有効断面積


 

ブレースの保有耐力接合

最後に保有耐力接合ですが、これはブレース材の全強よりも接合部耐力が上回るようにする設計法です。これは、本HPに詳細な計算を行っています。下記の記事が参考になります。

接合部の保有耐力接合と計算方法


 

ブレース構造の応力算定

下図に示すブレース構造の応力算定を行いましょう。


 

まず、反力を算定します。水平力Pが作用しています。片側はローラー支点なので、反力はPです。また、鉛直反力ですが、P×L/L=Pが求められます。外力として鉛直荷重は作用していないので、鉛直荷重がトータルで0になるためには、鉛直反力=『P又はーP』です。


 

いまブレースに作用する軸力は支点に作用する反力と釣り合います。左側の支点に着目すれば、水平反力―P、鉛直反力―Pです。つまり、この合力はP×√2です。よって、釣り合う軸力は、√2P=1.4Pです。


 

但し、こんなに丁寧に反力を求めなくても作用する水平力Pに対して、ブレースに発生する軸力は、N=P×αです。α=H/L(Hは構造物高さ、Lは構造物スパン)。


 

あとは断面算定をするのですが、有効断面積に関しては、下記の記事が参考になります。

断面積と有効断面積


 

まとめ

今回は、ブレース構造について説明しました。ラーメン構造と比べると、注意すべき点が多くあります。特に接合部の設計は間違えやすい項目ですから、注意しましょう。

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